人人人、人間人間人間、意識意識意識 新宿西口地下にて

 

新宿西口の地下はいつも息苦しい。涙さえうかぶほどに。

 

無数に蠢く人と人と人と人と人。

みんな何かに引っ張られるように、まっすぐ一点、前だけ見つめて歩く。

あるいは誰かと一緒に会話をしながら。

自分と仲間たちだけが世界のような雰囲気を身に纏って。

エスカレーターの乗り口で立ち止まって、流れが乱れた瞬間だけ、その人たちの世界は広がる。結界は破られる。

 

人々は、マグロや同程度の魚たちのように広い地下空間を自由自在に突っ切って、進行方向に誰かがいても気にせず直進する。

誰かのことなど見えておらず、そのさきの目的地だけしか見えていないかのような振る舞いだ。

 

ふと立ち止まってあたりを見渡すことはまるで許されていないような雰囲気。

移動の波に乗らなくてはならない、という圧力。

 

そんな人波、人混みを構成する人たちが、おそらくは私と同じように意識を持ち自我を持っているということが不意に恐ろしくなる。

 

肉で閉じられ、服で着飾ったその中に、私と同じような意識がいて、それがそんな雰囲気を微塵も見せずに直進してくる。

 

帰宅ラッシュに人波と逆方向に歩く時など最悪だ。

押し寄せる意識と人間の質量に押し流されそうになる。

 

私が繊細だからなのだろうか?

いや、あの光景には恐怖しないではいられないだろう。

それが毎日、毎日、毎日繰り返されているなんて。